Smilesfarm555 (河上りさの活動)

2026.06.28 『トランジット・デイズ』プレミアム上映会

トランジット・デイズを制作した理由

子どもからカミングアウトをされたというトランスジェンダー当事者を巡るエピソードで、当事者の葛藤や奮闘が注目されますが、その隣には親の葛藤や奮闘もあります。性別移行は、当事者だけで行われるわけではありません。

親を含む当事者につながる人たちの人生にも変化をもたらすのです。ただ、当事者ではないので、当事者である子どもへの理解と言ってもなかなか難しい壁があり、誰よりも一番近くで共に生きてきた家族であるからこそ受け入れることが難しいという現実もあります。

否定したいわけではないのに、寄り添うつもりで振る舞ってはみても、それが逆に当事者である我が子を追い詰めたり、関係性を悪くしたり、どこまで行っても分かり合えない平行線的関係に悩んでしまうこともあります。そんな時に周囲に悩みを打ち明けたり、相談できるコミュニティが、当事者ほど充実しているわけではないという現実もあります。

トランスジェンダー当事者のお母様との対話の中で、自身の子どもの性別移行を振り返り語られました。この作品が、トランスジェンダー当事者と親の歩み寄りのきっかけに、そして当事者はもちろん、当事者家族のコミュニティの発展のきっかけになれたらと思います。

配役について

この作品の配役には、当事者ではない方をトランスジェンダー役に起用しています。
性別移行の段階、トランスジェンダーであると表明して生きる人や、表明せずに社会に溶け込み生きている人もいるように、一括りにできない多様な当事者たちを描くには、配役を当事者だけに拘らないという選択が、よりトランスジェンダーのリアルな姿を伝えられると判断しました。

一方、物語の中にちょこちょこっと登場する主婦であるとか、買い物に来た人、街を歩く人などを、トランスジェンダーではない人の役の一部に当事者を起用しています。

これは、昨今のSNSで言われるようなトランスジェンダーの女性は体格が大きく、青髭を蓄えている等、見ればすぐ男とわかるなどという出鱈目な言説に対するアンチテーゼでもありますが、決して一括りにはできない多様なトランスジェンダーを含む、全ての人々が社会に混ざり合い生きているリアルを表現する為の試みでもあります。

何が最適解かという事ではなく、さまざまなチャレンジの積み重ねの先に、当事者に対する誤解と偏見が溶け、理解の促進に繋がるものと考えています。
この度のチャレンジは、その一つの道筋であると考えます。

河上リサ